雨上がりの散歩は「水溜まりマニア」にとっての宝の山

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ブログのタイトルは『晴行雨読』ですが、夜、雨が降っていて、朝にはやむ予報が出ていると、散歩に連れていってもらえるのを待つ犬のように、そわそわしてしまいます。「今日はいい水溜まりに出会えるだろうか」とついつい胸が高鳴ります。そう、実は私、水溜まりマニアなのです。

(※みずたまりは「水溜まり」、「水溜り」、「水たまり」など、表記の仕方がいくつかあるのですが、ここでは基本的には「水溜まり」で統一しています)

水溜まりマニアになったのはつい最近のこと。Twitter、Instagram、Blogなど、2020年になって突如SNSに目覚めて、散歩をする時にスマホで写真を撮るようになったのがきっかけです。

歩きながら何かいいモチーフはないかと探していて、水溜まりの魅力にハマってしまいました。なので、ほんの数か月前からのニワカです。ただし10代の頃はいつも下を見ながら歩いていたので、水溜まりマニアになる素地はすでにその頃からあったのでしょう。

「水溜まり」という小宇宙の魅力

水溜まりの最大の魅力は小宇宙が広がっていることです。のぞきこむと、地面、溜まった水、空、建物など、さまざまな景色が一緒に映り込んで独自の世界が出現。

例えば、上のマンホールの写真。デコボコしたアスファルトとマンホールがあり、マンホールには薄く土が堆積していて、その上には雨水が溜まっています。水面には木々や空や民家が映り、日射しがあたってキラキラ輝き、さらにその表面には枯れ葉が浮いています。Photoshop的に表現すると、幾層ものレイヤーが形成されているかのようなのです。

(※この記事で掲載した写真はすべてエフェクトなし、トリミングなし、スマホで撮ったままで、一切、加工していません)

水溜まりに映った光景がまるで水中都市のように見えることもあります。

水面から上の世界と下の世界。もともと空想癖があるのですが、水溜まりはその空想のスイッチでもあります。

水溜まりは天然の万華鏡

水溜まりのもうひとつの大きな魅力は見る角度、高さなどによってガラッと景色が一変するところ。水溜まりは天然の万華鏡なのです。下の4枚の写真はひとつの水溜まりをほぼ同じ時間帯に撮影する向き、アングル、高さを変えて撮影したものです。

なんの変哲もない地味な水溜まりで、電線が見えるだけ。
横から撮影すると、横の公園内の照明塔と電車の高架の一部が。
反対側に回り込むと、信号と家が入ってきました。
ほぼ真上から撮ると、自撮り状態に。

水溜まりは動いてくれないので、自分が動くしかありません。しかしわずかな移動で(時には数ミリ高さを変えるだけで)、水溜まりの中の景色は一変するのです。

一期一会。今日あっても、明日はもう存在しない

水溜まりの魅力としてもうひとつ挙げられるのが一期一会。今日あった水溜まりが明日には消滅しているかもしれません。いや、朝にはたっぷりと水をたたえていた立派な水溜まりが夕方には見る影もないほど小さくなって、道路のシミになっていることすらあります。

水溜まりは太陽の光の具合にも大きく左右されます。さっきの景色が、数分後(特に朝日や夕日の時間帯)にはまったく違うものになっているケースも少なくありません。

儚い存在であることが、水溜まりの魅力をより一層、際立たせていると思うのです。

あと数時間の命の小さな水溜まり。セミの一生よりも儚いです。

水溜まりにもいろいろなタイプがある

本来、水溜まりにタイプなんて存在しないのですが、マニアには分類したくなる性分があります。ついつい名前をつけたくなるのです。まず場所による分類。

①道路の真ん中系

②道路のはしっこ系

③空き地系

④石畳など人工系

⑤原っぱ系

他にもある水溜まり分類方法

分類方法は他にもあります。例えば、水面に何が映っているかによる分け方です。太陽、空、雲、鉄塔、電線、電柱、信号機、樹木、民家、ビルなどなど。キリがないので、わかりやすい例をいくつか紹介しましょう。

◎太陽

◎電信柱

水溜まりの表面が風で揺れると、波形の特殊効果が! マニアは風が吹いても喜びます。

◎街灯

水溜まりマニアが注意しなければいけない3つのこと

ひとりでもいるかどうかわかりませんが、もしこの記事を読んで、水溜まりマニアになろう!と考える人がいた時のために、注意事項を3つ挙げておきます。

①歩行者に気をつける

道のはじにある水溜まりならば、まだいいのですが、道のど真ん中にある水溜まりを撮影していると、歩行者の邪魔になります。いい水溜まりに出会うと、サッと撮って、パッと離れるということがマニアにはできません。あれやこれやと試したくなり、撮影時間が長くなりがちです。あたりに人がいないことを確認して撮影しましょう。突然自転車が現れることもあるので、こまめにあたりを見回しましょう。

②車に気をつける

水溜まりはどこにあるか、わかりません。横断歩道を渡っている時に、見つけてしまったら、要注意。歩道と車道の区別がないところもかなり危険です。

特に水溜まりの撮影はローアングルになるものが多く、しゃがんだり、かがんだりという姿勢が増えます。幼児よりも低い位置で撮影していると、車から見えにくいでしょう。夢中になって撮影していて、エンジン音が耳に入らないという事態は回避せねばなりません。シャッターを押した瞬間、自分が轢かれている姿が水溜まりに映っていたら、シャレになりません。車にはくれぐれも注意を。

③服が汚れないように気をつける

水溜まりをローアングルで撮影していると、どんどんエスカレートして、膝をついたり寝そべったりして撮りたくなります。しかし水溜まりがあるということは、その周辺も濡れている可能性が高いのです。もはや泥んこ遊びが似合う年齢ではありません。仮にいい写真を撮れたとしても、誰もほめてくれません。家族から冷たい目で見られるのがせいぜいでしょう。それでもいいという方は汚れてもいいかっこうをして、万全の体制でのぞんでください(そんな人、いないですよね)。

散歩の楽しさを倍増してくれる水溜まり

散歩はもともと楽しいものです。しかし水溜まりマニアになると、その楽しさは倍返し(古い? しかも使い方を間違っている?)で広がります。そういえば、TRICERATOPS「水溜りの向こう」という曲があります。もともとは和田 唱さん松 たか子さんに提供した2006年のシングル曲で、その後、TRICERATOPSのライブアルバム『Shake Your Hip!!』にセルフカバーを収録。水溜まりの気持ち良さが伝わってくる名曲です。ひょっとして和田さんは水溜まりマニアのパイセンかもしれません。(水溜まりと水溜り、表記が違いますが、どちらもOKなのです)

水溜まりマニアにとっては、雨上がりの散歩はワンダーランドです。こんな景色と出会ったら、憂鬱なことがあっても一瞬で吹き飛びます。

川に見えるかもしれませんが、河川敷にある歩道なのです。もっと引いてみると、こんな感じ。

ただし、水溜まりはあくまでも水溜まりの範囲内だからこそ、いいのです。近年、豪雨災害が多発しています。胸の痛むニュースが多すぎます。小分けにして、降ってくれたら、どんなにいいことか。

自然は災いをもたらすこともありますが、恵みを与えてくれることもたくさんあります。

水溜まりは自然のプレゼントだと感じてます。それは胸に溜まっているものを流してくれる効果があるから。

中学時代の自分はいつも下を向いて歩いているタイプでした。

「なんか暗いな。覇気がない。もっと胸をはって、上を向いて歩きなさい」「うつむいて地面ばかり見ていると、チマチマした人間になるぞ」などと教師から何度か言われたことがあります。自分が10代の頃、上や前を見て歩くのが苦手だったのは、空を見たくなかったからではなく、人間が視界に入るのが嫌だったから(自分も人間ですけど)。

10代の頃の自分に成り代わって、当時の教師の発言に今ここで反論しましょう(遅すぎ!)。

「下を向いて歩いたっていいじゃないか。ひび割れたアスファルト、穴ぼこだらけの道路、整地されていない空き地、そんな地面にだって、空は広がっているんだよ」

今回の記事は、胸を張り、前や上を向いて歩くのが苦手な人、つい、うつむいて歩いてしまう人に贈ります。

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